コールセンタ
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エレクトロメータは、高入力インピーダンスの直流増幅回路技術を基本として、直流電圧、直流電流、抵抗、電荷などを測定する直流マルチメータです。
エレクトロメータの入力回路の入力インピーダンスは、1013〜1015Ωと非常に高く、また入力バイアス電流は、10−11〜10−17A以下であり、一般のデジタル・マルチメータに比べ3桁以上の高性能を有しています。
このような高性能の入力回路の実現には、
(1)振動容量型増幅器
(2)電界効果トランジスタ直結型増幅器
(3)低周波パラメトリック増幅器
などがあり、エーディーシーのエレクトロメータは(2)の方式が採用されています。
エレクトロメータの主な測定機能は、
(1)入力インピーダンスが1013〜1015Ωの直流電圧計
(2)10−11〜10−15Aの検出感度をもつ微小電流計
(3)1011〜1017Ωの測定ができる高抵抗計、および絶縁抵抗計
(4)10−14〜10−15Cの検出感度をもつ電荷計
などがあります。
以上のような測定範囲をもつエレクトロメータは、半導体の評価、絶縁物や高分子材料の研究、コンデンサなど電子部品の試験、放射線測定などに広く利用されており、その測定に適した試料箱、テスト・フィクスチャなどをとりそろえてあります。
また、このような高感度の測定には、一般のシールド・ケーブルでは、ケーブル内で発生する電荷や絶縁抵抗が問題となりますので、専用の低雑音ケーブルが用意されています。
高信号源抵抗を持つ電圧の測定は、ケーブルの容量、測定器の入力容量、披測定物の浮遊容量などによって、レスポンスが遅くなります。たとえば信号源抵抗が1000MΩの場合、ケーブルなどの容量が100pFあったとしますと、この時定数(t=100ms)により、最終値の±1%以内に入るまでのレスポンスは、約500msとなります。このレスポンスの遅れを改善するため、ドライビング・ガード方式があります。
この方式は図1に示すように、電圧計の入力増幅器の出力で、ケーブルおよび測定器内のガード・ケースをドライブする方法です。
図1において、ケーブルの芯線と、内側のシールドとは同電位となりますので、CX1の容量は無視され、また内側のシールドは低インピーダンスになるため、CX2による影響も無視されます。またこの方式を使うと同様の理由により、ケーブル絶縁抵抗による、リーク電流も無視されるため、みかけ上のHi−Lo端子間の絶縁抵抗も高くなります。
このドライビング・ガード方式を採用することによって、レスポンスは約10〜100倍ほど改善されます。
ドライビング・ガードを完全に行うためには、ケーブルおよび測定器のガードを二重構造にする必要があり、全機種でこの構造が採用されています。(5350ではドライビング・ガードと、ノーマル・ガードの切換えをDGUARD ・スイッチによって切換えています。)
10μA程度以上の電流は、メータ(指示計)で直接測ることができますが、より高精度な測定、または微少な電流を測定するためには、直流電圧増幅器を応用した電流計が使用されます。特にエレクトロメータでは、10−11A以下の微少な電流を測定するため、この方式が採用されています。
この直流電圧増幅器を使った電流計には
(1)シャント方式
(2)フィードバック方式
(3)可変ゲインフィードバック方式
(4)積分方式
の4通りの方式があります。
(1)のシャント方式は、一般にDMM( デジタル・マルチメータ)に多く使用され、(2)の方式はエレクトロメータのように、微少電流を測定する場合に多く使用されています。
(1)〜(4)の方式それぞれに特長があり、測定する対象物、電流値によって、使いわけられています。
図2(a)にシャント方式の電流計を示します。
この方式は、入力のHi−Lo端子間に電流検出用抵抗Rrが入っており、電流計の入力インピーダンスは、この入力抵抗そのものになります。信号源抵抗をRsとしますと、入力インピーダンスによる誤差は、Rr/(Rs十Rr)となり、RsはRrに比べ充分大きい必要があります。この方式の特長は、
(1)入力雑音に対し、フィードバック方式に比べ強い
(2)コンデンサなどの容量性試料に対し、安定に測定できる
と言う反面、
(1)入力インピーダンスが高い
(2)ケーブル容量、入力容量などによって、レスポンスが遅くなる
(3)入力部の絶縁抵抗が、検出抵抗に比べ充分大きい必要がある
などの欠点があります。
図2(b)に、フィードバック方式の電流を示します。
この回路は、入力に高入力インピーダンス直流増幅器を使った反転増幅器を使用し、帰還回路に、電流検出用抵抗Rrが接続されています。
回路の入力インピーダンスは、Rrを増幅器のゲインAで割った値となります。たとえば、1pAの電流を測定する場合、シャント方式の入力インピーダンスは、1011Ω程度となりますが、フィードバック方式では、107Ω程度となります。また、入力のHi端子はLo端子と同電位となりますので、ケーブルなどの入力容量によるレスポンスの低下、Hi−Lo端子間の絶縁抵抗を通してのリーク電流増加などを防ぐことができます。
この方式の特長は、
(1)入力インピーダンスが低い
(2)レスポンスが速い
(3)入力部の絶縁抵抗によるリーク電流が少ない
などがあげられます。しかし、反面、
(1)入力雑音に対して弱い
(2)容量性試料の場合は、電圧源の交流ノイズを増幅する。
(3)信号源抵抗が帰還抵抗Rr に比べ非常に低いと、入力アンプのオフセット電圧が誤差となる。
などの欠点があります。
以上のように、2つの方式の特長を生かして、半導体の評価などの高レスポンスを要求する測定には、フィードバック方式が用いられ、コンデンサ、高分子材料の試験など、容量性の試料には、シャント方式の電流計が用いられています。
また、半導体のリーク電流の測定では、電流計のレンジ切換時のスパイク・ノイズ、オーバ・レンジング時の電流計からの過電圧印加などによって、素子の破壊をまねくことがあり、この対策が充分なされた電流計を使用する必要があります。5450、5451では、これらを考慮した回路設計がなされており、半導体評価用として最適です。
フィードバック方式の反転増幅器のゲインをコントロールすることで、フィードバック方式、シャント方式を切り替える方式です。すなわち、シールドなどの条件が悪く外来ノイズが多い場合はゲインを小さくしてシャント方式の状態に、外来のノイズが少なく、高速に測定したい場合はゲインを大きくしてフィードバック方式の利点が使用できます。
測定環境に応じてノイズに強いシャント方式と、高速測定に強いフィードバック方式を使い分けることが出来ます。
この方式は5450、5451に採用しています。
反転増幅器の帰還回路にコンデンサを使用して、被測定電流を一定時間コンデンサに充電することによって電流ー電圧変換を行います。その為定期的にコンデンサを放電する動作が必要です。この方式は交流のゲインを低くできる為、帰還回路に抵抗を使用したフィードバック方式に比べ対ノイズ性に優れています。
また、微少電流を高分解能で測定したい場合は長時間の充電時間で、分解能が必要ない場合は短時間の充電時間で測定する事が可能です。この方式は8252に採用しています。
抵抗測定の方式には、図3に示すように、
(1)電流印加電圧測定方式(定電流法)
(2)電圧印加電流測定方式(定電圧法)
の2通りの方式があります。
(1)はDMM(デジタル・マルチメータ)に使用されており、さらに2端子測定法、4端子測定法の2通りの方法があります。一般に1Ω以下の低抵抗測定には4端子測定が使用されますが、エレクトロメータでは、10Ω〜1014Ω程度の高抵抗測定を対象としており、2端子測定法が使われています。
この方式は、ケーブル、試料などの容量に一定電流でチャージするため、レスポンスが遅い欠点がありますが8252では、前記の電圧計と同様にドライビング・ガード方式を採用し、この欠点を改善しています。
後者の電圧印加電流測定方式は、一般に絶縁抵抗測定に使用され、微少電流計で測定した電流で、印加電圧を割った値を表示しています。この方式は、レスポンスが速い、試料に印加する電圧が一定である、などの点から高抵抗素子、コンデンサの絶縁抵抗、高分子材料の測定などに、広く使われています。
特に、コンデンサ、高分子材料などは、試料に印加する電圧と、印加時間(チャージ時間)がJISなどで規定されていることや、材料試験の場合、体積抵抗率と、表面抵抗率の測定が必要なことから、この方式が使われています。
絶縁物の測定において、絶縁計(または微少電流計)を、試料につないで測りますと、始めは低い抵抗値を示し序々に抵抗が高くなっていくものがあります。(試料に流れる電流でみると、始め大きな電流が流れ、次第に小さな値になっていく。)また試料によっては、つないだだけで、印加電圧を加えなくても、極微少な電流が流れるものがあります。
このような動きを、流れる電流に注目して、概略の様子を示しますと、図4のようになります。
絶縁抵抗測定の回路は図5のようになります。はじめスイッチSが①に入って、回路が閉じた状態で試料をつなぎ、電流計Aを振らせますと図4中aで示す部分のような微少な電流が流れます。この電流の極性、値は不確定です。この電流は、試料が持っていた電荷の放電・測定系および電流計のオフセット電流などによるもので、予備測定などでこの値をノイズレベルとして知っておく必要があります。
次にスイッチSを②に入れますと、試料に印加電圧が加わり最初、系の容量分に流れる大きな電流があり、その後にほぼ指数関数的に変動していく電流が測定されます。この電流は、試料内部の分極や双極子回転などによる電流で、吸収電流と呼ばれています。
この電流が平衡に達しても残る電流が漏れ電流(逆にとらえると導電電流)で、試料内を流れるイオン電子電流となります。(図4中bの部分)絶縁抵抗の値としては、この漏れ電流と印加電圧から求めることになりますが、先の吸収電流が平衡値におちつく時間は、試料によって異なり、相当長時間を要するものもあり、また平衡することなく変動しているものもあります。このため、電圧印加後の時間を定めて値を求めないとデータの比較はむ
ずかしくなります。
8252、5450、5451では、電圧印加後、データ取得するまでの時間を任意に設定できるタイマ機能によって、この問題を解決しています。
このような電流の流れる様子は、試料内部の物性的な情報を示していますので、印加電圧・温度・試料の条件などでのデータを求めて、解析が行われます。
スイッチSを①にもどし、印加電圧を切り回路を閉じますと印加時とは逆方向の電流が測定されます。この電流は試料および系に充電された電荷が放電するもので、吸収電流による電荷量とほぼ等しい放電電荷があり、完全に放電するには、長い時間を要するものがあります。この電荷が残っているため、一度電圧を加えた試料を再度測ると、値が異なることがあります。
シート・フィルム状の試料や、絶縁板の体積および表面抵抗および抵抗率の測定は、図6のような円板状の主電極と対向電極(高圧印加電極“体積抵抗測定時")およびガード電極(リング電極)の組合せで行うことができます。体積抵抗の測定は、主電極と対向電極で試料をはさみ、図のように印加電圧、電流計回路をつなぎ、試料の厚さ方向に流れる電流を求めて行われます。この際、試料の表面を通して、電流計に入り込む電流を防ぐため、円環状の電極を主電極の周囲におき、この電極を電圧の帰線につないでおきます。
測定の電極として、当社の試料箱・電極では、ステンレスで表面を平面仕上げしたもの、または導電性ゴムを使用したものを用意しています。
抵抗値(RV)は、印加電圧(EB)、試料電流(i )として、
として得られます。体積抵抗率(ρv)は、試料厚さ(t)、主電極の径D1として
D1=50mmとすると
として得られます。
表面抵抗の測定の場合は、前記の対抗電極とガード電極の接続を逆にして、図のようにつなぎます。
表面抵抗(Rs)は、印加電圧(EB)と電流(i )から
として求められ、表面抵抗率(ρs)は、主電極径(D1)ガード電極( リング電極)内径(D2)として
D1=50mm、D2=70mmとすると
として得られます。
電荷の単純なモデルとして、図7のように、点AがQクーロンの電荷を持ち、その電気力線が大地に閉じていると考えることができます。
点Aと大地間の容量をCAE(F)とすると、点Aの電位(V)は、Q=CAE・Vとして知られていますから、電荷の測定としては、CAEが知られているとすればQまたはVを求めることになります。電荷量を求めるには、試料から出る電気力線を全て集め、値の知られているコンデンサに移し、コンデンサの電位または蓄えられた電荷量を測ることになります。
この方法の一つとして、図8のような、導体でできた充分深いカップの中に試料を投入し、この導体を電荷計またはコンデンサにつなぐことが考えられます。このような方法は、ファラデー・ケージ法と呼ばれています。
このような測定に用いる電荷計としては、入力インピーダンスが低く電荷を全て電荷計に移しこめるもの、ケージや接続部のストレイ容量の影響の少ないものが望ましく、また電圧を求める場合には、入力インピーダンスの高い電圧計が必要となります。また電荷の放電電流を測る場合は微少電流計が用いられます。
X線、γ線など放射線線量率の測定には、気体のイオン化電流から測定する電離箱(イオンチェンバ)が広く用いられており、エネルギ依存性が少なく、小線量から大線量まで直線性が良いこと、イオン化効果を用いますのでレントゲン単位の定義通りの測定ができるなどの点から基本測定としても用いられています。電離箱を使用した測定では、測定電流が10−14A〜10−12A程度となりますので、通常は、エレクトロメータが用いられます。
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